
一八七六年、漢陽(ハニャン)。西小門の外の紙屋。
その家に、娘がひとり生まれた。
十七で神病(しんびょう)を患い、
軒下で人の相談を受けるようになった。
客が来ると、彼女はいつも目を閉じた。
人が口を開く前に、その人の肩に
何が乗っているのかを知った。
人は彼女を明通さま(めいつうさま)と呼んだ——
目は閉じているのに、通じている、と。
一九四一年の冬、六十五歳。
彼女は軒下のその場所で、
膝に手を重ねたまま、座ったまま逝った。
それからも夜になると、その軒下に
誰かが座っている気配がしたという。
弟子の娘が書き留めた記録——
当たったものも外れたものもそのまま記された明通の手帖を、
解き写したものである。